no.253

爽やかな色使いの油絵や、書きたいものに気づけない詩人、もうこの世にいないアーティストの作品、それに触れ自分の欲望を見つけた少年。新しいものは死に、古いものから何か生まれる。明日はきっともっといい日だと目を逸らしたい今日、カレンダーを塗りつぶしていく紺碧のフェルトペン、誰か殺してくんないかなあとぼやきながら真反対のことを考える少女の顎にあるほくろ、明後日手術を迎える、老夫婦の繋いだ手、天空、一瞬のマジックアワー、雑多なものであふれたカメラロールにおさめる純真、気づかれない青春、食卓に配布される訃報、間違われたリチウム電池、初めて飲んだ微炭酸、静かになる蝉、燃え上がる線香花火。間に合わない、追いつけない、満たされない、届かない。走り出して、追いかけて、乾きを知って、また手を伸ばす。美しい保証はない、安全な保証も、幸せになる保証もない。同じ場所にずっといられないだけ。おまえは無謀だってきみから笑われるのが好き。仕方ないなと隣にいてくれるきみのことはもっと好き。