no.252

信じるよりも確かなこと。
手を伸ばせば握り返されたこと。
遊ぶようにさみしくなかったこと。
金物屋で凶器を物色していた放課後。
あの子たちみたいにきれいに翻らなかった制服のプリーツ。
未来なんかどこにもなかった。
赤信号で踏み出した月曜日の夕暮れ。
泣きながらアルバムをめくっていた金曜日の朝。
どんな時も、見えなくてもそこにあることでここまでを生きてこられた。
夜の虹のように。
踏みにじったコラージュ。
笑われた名前。
滅びろって思ってた。
だけど難しいから変えちゃおっか。
って、思ってた。
金物屋の跡地には新しく郵便局ができた。
切手を貼ってあの日に届けよう。
手紙の書き出しはこうだ。
親愛なる十年前の死にぞこないへ。
そんなに悪くないですよ。
破られるかな。
だけど知ってほしい。
踏み出すんだろう、そして死に損なうんだ。
だけどどうせ踏み出すんだろう。
その一歩で行けた場所を捨てて。
だけど死に損なう。
一度も信じられなかった未来からのささやかな贈り物だ。