no.235

僕が食い入るように読んだあの言葉は、今、どこだろう。もしかすると僕しか知らないのではないかと思わせる密やかな場所は。あなたは今はもう忘れただろうか。それとも覚えていながら、忘れようと試みては何度か敗れただろうか。あなたの生み出したものは、もうどこにもない国をどこまでも存続させるような狂気めいた信念があった。それに傷ついた人もあっただろう。僕も気づいていないだけでもしくは気づかないようにしているおかげで、だけどほんとうはそんなふうに一方的に被害者意識を抱えたうちの一人かも知れない。心に留め置く必要があった。あなたはあなたの気持ちだけでいつでも旅立つのことのできる人であったこと。そうと悟られず捨て去ることのできる人であったこと。例外なく誰もがそうであるように。ああ、記憶だけが僕をだまそうとする。事実はこんなにも明らかなのに。あなたにとっての僕が、僕にとってのあなたのような存在になれていたらきっとどちらかは救われたのに。

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