no.229

どうしても白にしか見えない。あの日とあの日を引っ張ってきて重ね合わせるんだ。灯台は泳いでは渡れないところにあってそのために推測だけで物を語るようになる。君たちが亡くなったのは春の一日でした。誂えたように綺麗な色彩の中、過不足なくすべて整って、何が起きても必然だったと思い込めるような昼下がりでした。君たちは緑色の湖に一人ずつ背を上に浮かんでいて僕は一瞬、悲しいとか恐ろしいとかよりも先に何故だか安心してしまったんだ。こんな日なら。こんな景色なら。ちっとも残酷な出来事ではないだろうと。今でも僕はその一瞬の感覚を思い出しては自分を見失いかける。だけどそれは時を経てますます強く鮮やかに、それ以外を飲み込みそうになるから僕はよく他人から幸せそうだと言われる。そんなんじゃない。いや、そうなのかもしれない。紺碧の夜空にあいた無数の穴がいつか全部線で繋がったら支えきれなくて落ちてくるのだ。向こうもこっちもなくなって一つになるということ。起こらないうちは夢で絵空。君たちを泣く人は僕を除いて誰一人いない。そう思い込めたら自然と笑みがこぼれる、邪悪で無知な。