no.224

白目が青く火照っている。八月の水曜日。買ったばかりのガイドブックを貪るように読んだら夢も希望もなくなって、ただ死なないように死なないように息をしていた。隣の工場が音を立てているのも隣人の好きな音楽も同じくらいうるさくてどうしようもない。心の狭いやつと思われたくなくて平然と挨拶とかする。ベランダから指の先ほどの面積で海が見えるんだけど見たらかえってむなしくなる気がして寝そべっている。溶けそうに。いつかまた冬が来るなんて信じられないで一日を過ごす。一年を過ごす。やがて一生が過ぎて、それでも蝉だけは鳴いている。このアパートが朽ち果てて僕の知ってる誰も残っていなくても。