no.222

好きな人に好きと言わないと決めて百年。壁に飾った遠い風景からは今でも止まない波の音がする。君とあの人はやがて死ぬけど僕は終わらない。そのことを幸せとも不幸せとも言わない。後ろを振り返れば透明の糸は七色に輝いて僕の脊髄に結ばれている。悪いことじゃない。たどり着かなかった場所のあることは。果たせない夢のあったことや、会えない人のいたこと。君が眠る時にすべて叶えてあげる。まぶたに手のひらをのせたら、誰でも微笑みながら涙を流す。自分を産んだ人が初めて見つめた瞳のように。説明はいらないことだよ。ただ繰り返される。君にとっての一が僕にとっての百になる。橙と黄色。その上に青。いつまでも変わらないものだけが、変わらないものなどないって教えてくれる。