no.220

みんなこれをしていたんだ。これを普通にしていたんだ。眠っている間に心臓がどくどく言うのと同じくらい当たり前にしていたんだ。そのたんびに血の気が引くような思いは知らないんだ。これができるなら死んだって構わないというようなおかしな順序を望むことはないんだ。人を傷つけたってそれは誰にもできることなんだ。おしのけたって、ひきずりおろしたって、分け隔てはないんだ。それはただ、できた。だから、していた。寝不足だろうが泣きながらだろうがほとんど心配なくそれはできた。きっと知らないだろう。考えもしないだろう。それができなくて全部捨てたくなる気持ちなんて。笑うだろう、時には励ますだろう。そんなこと気にしていたのか。そんなこと大した問題じゃないさ。そんなこと。そんなこと。そんなこと。そう呼びたかった。だってその通りだから。そんなもの。そう表現したかった。だって僕の目からでさえそうなんだもの。分離して行く気持ち。まるで他人の一部を眺めるような気持ち。それは変わらずそのままだった。だけど間違いなく僕の一部だった。うらやましい。うらやましい。うらやましい。あんまりそれが手に入らないから目を背けることもあった。そのせいで他のものが見えなくなったって構わない、聞こえなくたって構わないよって。時は静かに訪れた。魔法みたいに。ふいに日が差す瞬間みたいに。僕はずっとこれをしたかった。本当に本当に、したかったんだ。