no.216

綺麗なものを食べたい。薄明かりがカーテンを透かして部屋の中に染み込んでくるときにふと、まるでずっと考えていたことのように自然に思う。血は大切につながれてきて、今日もすでに意識せずにたくさんのことを行なっている。これからたくさんのことができる。ありあまる富を抱えて、きっと浪費もするだろう。確固たる意志を持ったせいで、きっと誰かを傷つけるし、言いなりになったりもする。そのたびに傷ついて失望する自分自身を、べつの自分がどこからか慰めるでもなくただ見ている。止まっているようですべてが動いている世界の中で歩みを止めて、その騒々しさに戸惑うだろう。僕を包んでいるものの冷たさ、そして温かさに対していちいち初めてのように驚きながら。君はそんな僕を黙って見守る。生きていないもの特有の透明で。肌に射す恒星の光が新しいひらがなの組み合わせを教える。僕は紡いで反応を待つ。音は形になって、形は音になって、反響を続ける。反抗したいだけの時間。取り戻せない時間。まだ出会わぬ時間。少しずつぼやけて、少しずつ優しくなる。どんどんそうなって、原型は失われる。気配だけになる。それはやがておぼつかない塊になって、君の中で次の目覚めを待つことになる。柔らかなぬくもりを一緒に思い出せる時を、待つことになる。