no.214

君は僕の知らない色で世界を塗り替える。誰かに伝えたくてもその名前を知らないから誰に伝えることもできない。見たこともないものを見て、聴いたこともないものを聴くから、存在だけ静かに光を増していく。季節は速さを失ったり得たりしていつかの少年少女をすごく遠くへ飛ばしてしまうことがあるから本当は油断できないんだけどそんなこと知らないから目をつむっちゃうよね。乾かない血の伝言が体内を埋め尽くしていつでも赤は綺麗。何かに染まる幸せをずっと知っている。伝えられない思いも、そして分かり合えない諦めから来る途方もない愛しさも、どこかで懐かしかった。君が称えていたものだったね。この奇跡に舌は怯んで何ものせない。互いの体温以外に確かなものは何もない。分かり合えないことが残っているだけでこんなにも尊い。僕と君が決して溶け合うことのないふたつの、違う魂だということが、こんなにも。こんなにも。

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