no.210

それぞれのひそひそ声。部屋はやさしい響きに満ちている。四月の光は暗い隙間にも染みて、ぼくに救えるものなど何もないと教える。神様の名前を知りたかった、誰か呼べないとさみしい夜に。だけど与えられなかった、握っても良い手が差しのばされるから。永遠も刹那もそこには無かった、ただ感嘆ばかりがあった。ぼくの青春は奇跡ばかりめくるめいてそのまますべてがまるごと一生だった。ただ忘れられるために咲く花も、ただ聞き流されるための呼吸音、鼓動、ぼくに備わるすべて。これ以上もこれ以下もない。今だけが過ぎて行く。いびつな神様たちを蹴散らして。さあ臆することなく、ありきたりな紙袋を開け。調和を意識せず未完成という完璧な形。きみを好きだ。本音の飾り方なんか忘れた。目をあけて大丈夫、もう一つの季節を越える。わくわくするような、ふたりっきりで。

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