no.203

こっちを向いてと君は言わない。私を見てと君は。意思のない粒子が整列して誑かしたり自慢をする。柔らかい眼球はそれを信じてすくすく肥えてゆく。できるだけ遠くを見晴らせるようになることが嬉しいことなのか、それとも悲しいことなのか分からない日は、分からないなりの顔をしていれば良い。通りすがった誰かは最後まで自分を守ってくれる誰かではないのだ。溺れた先には溺れたなりの景色が広がっていることは間違いがない。それを正しく万能に審判できる人のいないこともまた間違いはない。ご存知と思うが僕たちは一瞬の慈しみを繋いでどこまでも歩ける。そうやって今まで延長をしてきた。今日を生きなければ未来はない。すぐの明日がどんなに美しいとしても。