no.12

遠くから見ている
何かに包まれて見ている
光と音が不鮮明な中で
きみに照準が合っている

耳元で誰か囁く
棘をはらんで風みたい
言われなくても
わかっていたこと

ふいにおかしくなる
かんたんで微笑ましい誤解だ
ぼくは
ぼくはきみを分からないでもいい

ぼくの見る世界で
きみはいつもぼくといない
ぼくが見る世界は
いつもぼくが欠落していて

でもきみは見える
ぼくの目に見える
ぼくと出会う前と
変わらずぼくには見えている

好きだった
そのことがとても好きだった
いつかぼくのものじゃなくなっても
それが変わらなければいいと思う

あっちへ行って
他の人に笑って
あまねく溶けて
薄まらず満たして
ぼくだけを見ないで
きみをしか見ない
見ないで
汚れやすいこのぼくばかりをそんなに