no.194

ビニルハウスはあったかいからここへ眠っていてほしい。白い空に浮かべた星のうち、爛れたものから降らせてあげるから。耳朶に真綿を噛ませて待って。きみが生まれた朝はまだお城があったんだ。青空を背景にしてまるで誰もがすがすがしいみたいに。繰り返しにうんざりしながら変化を起こすだけの思いもなかった。一番輝かしい瞬間は過去か未来か妄想の中にだけあって現在はあくまで観客席だった。いつか僕にだけ優しかった人がそうじゃなくなるのを見ているってとても辛くて不愉快なことだ。雨に濡れたパッケージからはみだしている宝石が、僕から開封の喜びを盗んでしまった。数えるほどしかなかった。あのときも今も。数えるほどには分かっていた。同じように見え透いてしまうくらいならビニルハウスに決めよう。誰も手入れをしない部屋。きらきらの密室。痛々しい作文と容赦ない幸福。物言わぬまま夢を見ている。老いもしないで朽ちもしないで。日が暮れたら半球体の異世界。また植えたらいいよ。何だって育てられるよ。サテンの屑が欲しいなら。スパンコールが足りないのなら。

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