no.191

何を差し出さなくても幸福になっていいだなんて知らなくて瞬きばかりしていた。終わりを知った途端に全部が全部輝いて見えて誰かのぶんがなくなっちゃったんじゃないか、とか。分離帯に立って夜空を見上げると今が始まりなのか終わりなのかわからなくなって同じメロディがからだじゅうを埋め尽くすんだ。真新しい何かを生み出すひとになれなくて失望を恐れて針は何度も同じ数字を撫でた、目の前を行き交う群れが影でしかなくて邪魔するものは本当にいなかった、期待も羨望もいっときの幻でしかないって知らないまま怯える、かわいいだけのきみでいてください。