澄んだ風に黒い髪がなびく
触らないで
誰にも何にも触らせないで
私はあなたのものだと跪いて欲しい
死がふたりを分かつなら
死をもたらすものを排除して
予測変換のでたらめをピリオドで黙らせる
冷酷になるくらい何度でもする
優しい笑顔の優しい人が
本当は怒りを湛えてるの知っていたんだ
分かるんだ
目を逸らさないとなじってしまうほどに
汚されなかった空白が
今は保身を嘆いている
誰にも言えないでいる
聞いてくれぼくは非常識なまでにさみしい人間
おまえはうつろな瞳でぼくを見る
うつろに見える瞳でぼくを見て
骨のように白い腕を差し出す
望むならきっと連れて行ってあげよう
甘美な極彩色の世界だそこは
望むことから解放されるそのものから解放
すべては取り上げられもう自由に悩まされない
知っているかあなたが苦しいのは自由のくせに空っぽだからだ
正論に次ぐ正論
ただしさは人を殺すと言うが
物理的にそれは可能だろうか
知らないが自分の体が溶けていく音を耳元で聞いた
ありがとうもさようならも言わない
十六で望んだ結末をいま手に入れる
いま手に入れたっていま手に入れたって
言いかけた台詞は後悔になる前に砂と吹き荒れる
今夜おまえは誰のもとに現れる
生前ぼくが愛した概念によく似た姿
少年少女の夢に出てきて甘ったるい夢を植え付ける
人ひとりの生を食らうずいぶんと息の長い死神なんだ