No.837

フィルター越しに見る世界
きみの肌が汗ばんでいく
細胞は生きることを忘れていない
きみだけが忘れてしまおうとしている

救いってなんだろうね
始まって終わるってさ
探すとか見つけるとか
愛だの恋だの胡散臭い

口調と裏腹に瞳の奥は凪いでいて
きみは遠いところにいるんだね
寂しいけれど寂しくなさそうだね
出した手紙はきっと届かないね

外気が体温を超えた一日
生き物の儚さを嘆く慈悲の目で
誰かがぼくらを見下ろしていた
まなざしが光となり容赦無く降り注ぐ

まぶし、と目を離した一瞬の出来事
透明の風鈴が無数の虹を辺り一面つくり
懐かしいと美しいに塗れて気が遠くなる
白い雲と青い空のもっともっとむこう

ああ、きみ、そこにいたのか
ぼくもそこへ行けるんだ
願うだけで、体なんかを残して
手放すのではなく溶けただけか

これ以上無いくらいの融合だ
夜を怖いと、
星を遠いと、
思っていたのは喧嘩を覚えた大人たちだけ

ほんとうは優しい
ほんとうに優しい
浅い眠りのようで疑っているよ
握る手はそこに無いけれど

カレンダーの日付けは巡っても
同じ一日は一度も来ない
何を差し出しても取り戻されることはない
だって溶けたから、飲み込まれてひとつになって

(昼寝か?)

覚醒間近
ほかの誰でもなくきみの声
ありがとう、また会いに来てくれた
目を開けない約束でぼくは、日に焼けた両腕を伸ばす

(夢のまた夢)。