No.822

夢にまで見たストーリーは夢の中にあったほうが輝いていた。神さまはそれをきっと分かってた。だから手の届かないところへあなたを置いた。オーロラを閉じ込めた球体がお気に入りをのせて海原へ出る。帰ってきて。どこへも帰らないで。どこかへ帰ってきて。空がつながっていればどこででも良い。みっともなくすがること、呆れたように笑われること、好きだ、千年すれ違って分かったんだ。だけど、あなた行くのか。すれ違うこともない場所。夢の中のどこでもない場所。氷に閉じ込められた酸素を求めるぼくたち、たしかに体温が足りない。言葉が足りない。歌が足りない。思い出が消えていく。一瞬に永遠の意味を知る。太陽が月に姿を変える、その境目を見た。所有者を求めて差し出された手、今ここにあるたったワンシーンを、ぼくは何度も夢にまで見た。