no.173

チュッパチャプスをかじりながら満月の下を歩く。誰も首を締めてくれないから。飛び出してきたスニーカーは左右反対で、だからって履き替える気にもならない。流れ星は肌を切りつけないから。はみ出したり引っ込んだり、ひとのからだって不思議ばっかで大嫌いだ。思い出だとかこれからだとか、今じゃない話ばっかで。線路の上を歩くけど始発までまだ時間があって、親切なひとを驚かせてしまうだけ。あんなにも望んだ浮遊が、簡単に手に入って茫然自失のまんなまなのかな。初めて盗んだ飴の味は何回出し入れしても分からないや。こんな僕の舌じゃ。