No.795

夜が消えていく
きみの瞳から
朝も昼も
やがて好きだったものも

始まりを見ていた終わりがあったよ
色褪せない夏があったよ
終業式の帰り道
八月の終わりに引っ越すことを告げた

きみは知っていたよと言った
いつ教えてくれるのかと思った
ぼくの口から
最後まで言ってくれないんじゃないかと

数年ぶりにきみと再会したとき
言った覚えが無いと言われる
突然で悲しかった本当に寂しかった
だからおまえは私を一生かけて甘やかすべき

電車の窓から橙が手を伸ばしても
絶対に触らせなかった
永遠に価値はないと思うから
いつかちゃんと消えたかったから

ちいさな時差の組み合わせ
またいつか会えるよ
あのひ会えたみたいにさ
そう言いきみは八月の向こうへ行ってしまう

今こそ満たせ
車両いっぱいに橙を
呼んでも取り戻せはしなくて
ふたり何度も見た星々が閉じた目蓋で増殖した