そばにいて欲しい時にあなたはもういない。命なんて短いんだよ。あなたの言葉は嘘だった。ぼくにとっては。あなたがいないまま終わることもない時間は、なんて永遠なんだろう。似た感覚を知ってる。夕方と夜がうまく繋がらなかったあの日、ぼくはモノクロの街を見ていた。色のあることになんて気づかずに。すれ違った臆病者、ベビーカーの双子、カラスの群れ、捨てられた容器につめられた死にぞこない、その破片。体からこぼれる無意味を持て余し、色は一つずつ消え、ぼくは昔を思い出せずにいた。あなたは道の先に現れた。ぼくより多くの色を手離して、軽そうな体で笑っていた。モノクロとモノクロが出会ったって、溶け合ったって、取り戻せるものなんて何も無いよ。そう語るぼくにあなたは頷きながら、ぼくのまちがいを教えた。しずかに目覚める朝、朝が夢の続きではないことに涙がにじむ。今ぼくの知る中で最もたくさんの色を含んだ一滴が、あなたのいない街へこぼれる。