小説『ナカナオライト』

もう頬杖をついてもいいよ。つきたいでしょ。疲れたでしょ。恋人から出た許可に身を硬くする。本当だよ。皮肉とかじゃない。攻撃もしない。もう、疲れた。

おれたちは満身創痍で向かい合っていた。すべて出し切ったと思ったのに、まだまだ湧き上がる。だけどそれはさっきまでの悪態じゃなく、楽しかった思い出だ。

終わるのかな。
ここまでなのかな。

考え始めたら急に悲しくなって泣き出してしまった。完全なる情緒不安定でふがいない。でも残してやろうと思う。こんなおれを焼き付けてやろうと思う。何度でも思い出すがいい。おまえが、傷つけた、男のみじめな泣き顔を。

誰がそうさせた?
誰が怠った?
誰が追い詰めた?
誰が、だれが、

「ごめん」。

それはルビーのように落ちてきた。

「ごめん。ほんと、ごめん」。

ダイヤ、サファイア、トパーズ、ペリドット、ガーネット、アメシスト、シトリン、タンザナイト、ラピスラズリ、

「ゆるさ、ない」。

知らない石に埋もれて、勝手知ったる星の上。おれは愛と優越感の船に揺られる。掌中にはいつしかヒスイ。もう奪われないよう飲み下した。