No.790

夜につかまらないよう夕闇を駆ける
それは朝と直接リンクするから
べつのところで温もりを教わった
光からいちばん遠い夕闇で

あやとりで遊んでいたら
オリオン座が指のあいだへ降って
「もうこんな時間だ」とつぶやく
きみがもう会えない人に見えた

冬の空気は気持ちを伝えてしまう
ぼくの抱いた不安の種を
きみはたやすく取り出し飲み込む
子宮のかわりに胃の中で溶けていく

奇跡を数えたことがあるよ
始まることのないものや
終わることを知らないものを
きみを簡単に忘れられるようにだ

記憶は邪魔をすることがある
強くなることを
立ち上がることや
ぼくがぼくであろうとすることを

言葉は偽りと判定する口々
ならばぼくは偽りにしか興味がない
自分のひいた風邪くらい認めなよ
きみはそう笑いぼくの額に手を当てた

オリオン座
満天をほうきで掃いて
ふたりだけの寝床をつくる
ぼくの知るあやとりは一人ではできない