No.781

どうか腐らせないでください
誰の名前も呼べないで神様に祈った
これはぼくの大切なひと
神様どうか腐らせないで

祈りが通じたのかあなたは腐らない
雪の夜も花の朝も変わらず
眠っているかに見えた
ぼくは真実を忘れたがった

覚えておいで
覚えておいで
同情もまた加害であることを
手当という攻撃のあることを

ぼくはあなたを運び出すことにする
なかなか動かせなくて困っていると
あなたがこともなく起き上がり笑ったので
なんだ歩けるのかとぼくも笑った

青い鳥のうまれる島を歩いた
言葉を捨てて平和を取り戻した種族の村
隔離された部屋でつぶやく人
野菜と水だけで育った獣の国

どこへ行ってもいい
わたしたちどこへ行っても良いんだ
あなたは優しかった
まるでぼくを説得するように

心配しないで
心配しないで
あなたをちゃんと送り出すから
それからぼくも旅に出るよ

どこかで出会おうね(そうしよう)
あのひ出会ったように(なつかしいな)
どこかで話そうね(そうしよう)
離れていたあいだの出来事を(たくさん)