絵の具を混ぜて唯一無二をつくりだそうとした神さまの試みは、既視感の連続で不発に終わった。欠けたのは新鮮、初心、慈愛と無垢。目をつけたら花を見て、口をつけたら喋り出す。彼ら彼女らへの憧憬は止まなかった。いつも。ちいさな鳥が卵を産んで、孵る前に獣に食べられても、雨は大地を潤して、虹は七色を描く。ぼくは自分になにが足りないか自覚している。それをどうやって補ったらいいのかも知っている。自分がどれほどそれを望んでいるかを。誰も望まないことを。人を傷つけない夕日や星空はない。朝は、思い出は、食卓の卵は、選ばれなかった野良猫、ぼろぼろの夢。描かなければ見なくて済んだのに。見慣れたものに飽きてしまっても、時間は巻き戻せないまま世界はリセットされる。きみの産声が正解も不正解も打ち破る、朝、美しい一日を迎えるためにそこらじゅうで絵の具を潰す。