【小説】『花葬の双子』

僕が私になる頃、空はすみれ色に変わっていた。正しい順番は疑うこともできたが、正しくあるという共通の目的のために平和は保たれ、僕達ははっきりと決別しようとしていた。忌ま忌ましい朝に向かう最後の夜の始まりに、惰性でストローは一本。側から見れば仲睦まじい双子のように見えるだろう。わずかの唾液とわずかの毒が互いの舌を潤していくので、器官はしばしその役割を忘れた。血に大差はない。人間が考えるほど血というものに大差はない。ふいに君は窓際に飾った花が枯れた話をする。不精な僕が原因であると責めているのだ。そこで僕は愛猫が不審死を遂げたことを引き合いに出す。とびきり真っ黒の、砂上に落ちた果物の影のようにかわいいやつだ。もういない。君が餌の調合を間違えたこと、知っているんだからな。弱みを散らつかせた後は瞳の中に真相を探り合うけど、一筋縄でいかないこともまた分かっている。どちらも。畢竟この争いは静かに平行線をたどって、いつもの場所へ落ち着いた。すると決まって僕は君のいないこの部屋がどれだけ虚しいか言って聞かせ、君は君で僕のいない暮らしがどれだけ退屈かを熱弁する。やがて夜が来て真夜中を経て朝が訪れ、暴力的な光がカーテンをこじ開ける頃。僕と君とは決別の目的を忘れてしまいひとつの棺に収まって、次の宵まで仲良く眠る。花が咲き小猫が跳ねる、僕らの大好きな棺に。両親の手によって優しく埋められた時のように、柔らかくまるく白い膝を互い違いに折り合って。