No.761

リズムがぼくを離れていかない
花瓶を買ったんだフラスコの
花が好きになれなくて
花さえも好きになれなくて

手紙を書くよ
あなたの声は知らないけれど
手紙を書くよ
切手を貼りたいという動機だけ

新調したペン先を今
信号機の青に浸す
禁止という言葉が行間から生まれ
隣の行に吸い込まれて消えた

ぼくが手紙を書くこと
手紙を書くためにペンを握ること
ペンを握るまでに至るあなたへの思いが
明日、欠落するかも知れない

今だけだ
どうしても眠ることできない
今しかない
よそ見している余裕はない

火のようにペンを走らせる
独りよがりに似ている
凍てつく前にペンを走らせる
ぼくはたぶん大人にならない

封筒に宇宙の切手を貼り
星から吸い込んだもの全部を還して
一生に一度の最期を迎える
この世には美しいものがたくさんあった

優しいひとがつくってくれた
正方形の窓から夜明けが見える
遠くのちいさな星よありがとう
ぼくより先に沈まないでくれて