【小説】青の告白

人がひとりでは生きられないことを、ある人は呪いと名付け、またある人は祝福と呼んだ。寝転がって空を見ながら、あなたはどっちだと問いかける。

しばらく待って返事がないので、寝てしまったのだろうと思う。勝手に帰ってしまったのだろうかと考えないくらいには、僕は呑気なんだろう。ことあなたに関することにおいて。

それは愛の告白?とあなたから質問を返されて内心、なぜあなたはそう思う?逆に僕はなぜそう思わない?などとまた別の分岐点で考え込んだ僕をどう誤解したか。あなたは、混乱させていたらごめんと謝罪した。

呪いだと思ったよ。あなたは回答する。最初は。(最初?じゃあ、いまは、変わった?)でもあるときに限ってそれは祝福となり得ると学んだ。(学んだ?誰から)。

つい今まで同じ青を映していた目が僕を斜めに見て、きっと僕の目にもまだ青の名残がある。あなたは僕の手をぎゅっと握った。
憎しみと慈しみと諦めとを合わせた眼差しを投げかけ。

「きみ以外、他に誰が?」。

あなたはたまに不思議をする。
問いかけることで肯定をすることがあるんだ。
クエスチョンを差し出すことで、僕にイエスと伝えるんだ。
僕が知らない術で僕と会話する。

思い出したように付け足された言葉が、思いが体を追い越すこともあると教える。そうやってきた。今までもそうやってきた、僕ら。今の振る舞いは何?と戸惑いながらとにかく一歩踏み出した。振り返ってみれば臆病者とは思えない大胆さで。理由は半日や一週間後に分かったりした。まだ分からないことや忘れていることもきっとある。分からないことがあるうちは、まだ恋かも知れない。

視界に何も映したくなくて、今を分かち合いたくて、目をつむり額を寄せて、名前を捨てたふたりはたったふたりだけの祝福を体現した。

名前を忘れることでかえって隔たりは無くなり、このまま溶けてしまうかもねと冗談を言い合いながらその実、いっそ現実になれば良いのにと通じ合っている。

もっとも崩壊しやすい輪郭はどこだろう?僕たちは指や舌で互いの体をくまなく調べ、そんな箇所はどこにもないといつもの結論に落ち着いた。

誰からの祝福も求めないかわり、誰からの呪いも受けない。
僕は僕たちを祝福してやまないし、あなたもそうだと分かるから。

この青い空の下で。
変哲も無い一日の出来事として。