夜は怖くないのに
朝がきて光に包まれると
ぼくにも輪郭ができ怯えてしまう
今日もまた影を引きずって歩くんだ
満員電車に揺られながら
何が怖いんだろうと問いかける
質問者も回答者も自分なので答えは無い
車両が大きく傾いて窓の外が夏だけになった
やりたいことも望みもないけど
それを隠して生きているだけじゃないか
これは一つの仮説
だから輪郭や影が怖いんだ嘘が見破られる
誰にも届かない言葉を
吐き続けていられるほど強くなくても
誰にも届かないとわかっている言葉を
吐かずにいられるほど我慢強くもない
結局吐き出すしかない
喉を通さない文字という文字を
誰の心臓も撃ち抜かない思いという思いを
今日もまた透明のまま目覚める
窓の外に流れる青色に別の仮説を描く
ぼくが生きることをやめられないのと同様
ぼくが言葉や文字をやめられないのは
ちゃんと誰かに届いているからではないか
寄り添っていても抵抗がなく
姿がないからあるがままの姿でいられて
時にはこころを垂直に貫く光のような
ぼくが知らずにそうされたように
車両の傾きがゼロに戻り
窓の外に人工物が戻ってくる
ぼくが見ていた夢と現のさらに先
この星で会いたい人に出会えそうな気がした