No.759

発光するものに照らされて、ぼくは今もここにいる。これからもここにいていいんだよ。優しい声に縛られて。脈をはかる長い指が感覚器にのばされるのに時間は要らない。いつでも言い訳ができるよう偶然を装って。みんな歩き出したよ。ぼくだけがここにいるよ。不自由のない場所で、培養される愛の中で。大丈夫。震えなくてだいじょうぶ。誰もが安心して信じられる存在をたしかめたいんだ。きみはちゃんと必要とされているよ。脈をはかる以上のことをせず、指が離れていく。後には甘い体温だけ残って、それもすぐに消えていく。一度でも困らせたい。一度でも踏み外したい。壊したい。『わがままを言わない』。成長過程で幾度となく刷り込まれたそのルールを破ると、あなたの目にも光が宿る。なんだ、意外と簡単かもしれない。そこからぼくはいくつものわがままを垂れ流す。精確な計測器のようにストイックなあなたが我を忘れてぼくに触れるまで、あと、7秒、白い、天井、左手のタグ、ああ、ぼくは、生きて、いたんだ。