No.756

あなたがここにいないので僕は、知らない女の子の爪の話を聞かされなくてはならない。爪と言うと怒られるんだ、ネイルなんだ。シーツの皺もアボカドの種もメモの殴り書きもあなただから好きになれたのだと知る。長い夢を見ていたようで、ここから長い夢が始まるようでもある。こどもの頃、家族で海水浴へ行った。世界の終わりみたいに美しい場所で、僕はすすんで迷子になったんだ。呼ぶ声を聞きたくて、探す瞳に見つけてもらいたくて。あなたもそうだろうか。そうなら繋がっていられる。アクリルに閉じこめられて、星の陰に隠れて、つぎの場所へ向かう途中だろうか。あなたを好きなままだよ。好きなままで、どんどん思いを募らせながら、女の子に言うよ。その色すごくいいね。僕も好きだよ。