no.148

どんなにか良いだろう。
いま僕がここで君の手を離したことが、百年後、誰かの命に繋がって、これまでにない光がお互いの瞳に宿ったことを誰かが知って励まされるのであれば。どんなにか美しいだろう。瓶の中の夕闇がいつか誰かの夢に現れて魔物から身を守るあたたかなマントに早変わりするならば。どんなにか尊いことだろう。誰もあずかり知らないところで、出会う予定もないひとびとが、ひとつの旋律に耳をすますとき、戦争は遥か遠いおとぎばなし、語り合うまでもなくそばにある平和、それぞれにとっての言語は第三者の耳に心地良く、毒は甘く、蜜は分け与えることができ、その身に宿した新しい何かは誰のものでもなくすべてのひとが触れていいのだとしたら。
どんなにか。それは、どんなにか。

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