あなたがぼくを愛さないので、あなたがなりたがっているものにぼくはなろうと決めました。少し難しかったが苦ではありませんでした。いろんな手を使ってここまできました。びっくりしたと思う。嫌悪もあったと思う。だけどぼくはもう衣装をかぶっているのでここから先は時間の問題。どんな恋も勘違いから始まるんです。つまりノンフィクションもフィクションから始まるんです。その中でかけがえのない本当を見つけていくということ。もし見つからなくてももともとフィクションだったものがやっぱりフィクションだったと分かるだけなので何を失ったわけでもなく、むしろ得るもののほうが多いだろう。あなたはなるべく気が散らないようにさくらんぼのヘタを結んでいるがぼくにはちょっと先の未来が見える。あなたはそんなに我慢強くない。ぼくはそんなに諦めが良くない。残り時間をどう使おうか。みるみるにじんでくる涙をかわいいと思ってしまう。小瓶に集めてレプリカの海をつくりたい。ぼくも今を堪能しよう。ぼくのものでないあなたを見るのもあと少しのことだから。そう信じているから。おねがいだ、あきらめて欲しい、これ以上の手はないんだ、全霊をささげたんだ。
『下克上の詩』