No.749

長生きできたらいいな。
箸のあいだから卵焼きがぽとりと落ちた。
なすすべもなくその着地をスーパースローで見ていた。
まさか。
まさかあなたからそんな言葉を聞く日が来ようとは。
あ、誤解しないで、きみと暮らすようになってからだよ、そんなふうに思うようになったのは、それまでは考えたこともなかったことだから。
あなたは何を訂正もしくは撤回したつもりでいるのか。
もう消せないよ一度ぼくに届いた言葉は。
届けられたぼくのものだから、つかんだぼくは消さない絶対に。

あなたがこの先どれほど自分を責めて憎むことがあっても、ぼくが大事にして離してあげないし壊させない、時間が足りなくても毎日刻んであげる。

ここは良いところだって。
この星に生まれて良かったんだって。
あなたにはぼくを虜にするくらいの輝きがあるんだって。
ぼくにはあなたしかいないんだって、あなたにもそう感じさせたいんだって。

生まれてみるものだね。

って、ぼくがあなたに言いたかった感想を、あなたはぼくに打ち明けてくれる。

ただ頷くことしかできない、これ以上ぼくをどうしようって言うの。

(言葉は朝顔のうえ雫として輝いている。それは土を潤し次の蕾を咲けよ咲けよと励ましている。)