No.748

足りないんじゃない、満たされないだけ。ぼくといても遠くを眺めるあなたから視界を奪ってしまいたい。手に入らないという、ただそれだけであなたのいちばんになった人に、生きているぼくがどうやって太刀打ちできると言う?夏の夜の長い始まりが空にすみれ色を連れてくるときも、雨に打たれた紫陽花が全身から砂糖水をこぼすときも、自然のすべてはあなたのいちばんに味方をして、ぼくを小さくてつまらないものへ変えてしまう。みんながきみを好きだと言うよ。あなたは教えてくれるけれど、意味がない。ああ、まるでわかってくれない。あなたじゃなければ、意味がないんだ。

(だけど本当はすべてわかって言ってるから、救いようはどこにもないんだ。)