no.144

落ちて行くのは一瞬なのに浮上するのは難しいこと。何故ってきいても答えは深い谷の底。底があるのかもわからないのに。放り込んだ声は星の裏側から出ていって今ごろ宇宙を泳いでいる。仮定をすべて本当にして。きみは新しい星に着床する。その頃には植えつけられた概念も消え去って。ただなんとなく、ただなんとなくだけが残っている。僕が告げたこと。僕が注いだもの。僕が植えた種。僕が寄せた頬。総量が決まっていて平等に分散された。明日あたらしいきみに届くといいな。またあたらしいあなたへ届くといいな。おはようって言って。置き忘れたおやすみを取り戻すんだ。