no.145

おとなにならない。ぼくだけは。わたしだけは。みんなそればっか魔法みたいに呟きながら新しい服を、今日も脱ぎ散らす。内側じゅう蛍光色でいっぱいにして。死体のふりをしながらそれが何にもならないこと、目をそむけたためにかえって強く意識してしまうこと、知る必要のなかった色までくわわって世界が鮮やかに全身を満たすこと。もともとどこにあって誰を食べて生きてきたのか、なにひとつ難しくなくても今はまだ知りたくないんだ。頭の上にある明るい月には蓋をして、夜の果てまで手を繋ぎたいよ。