No.744

みんなが年を取っていく中でぼくはひとり輝いていた。産みもせず、産まれもせず、みんなが属する輪を離れて見てた。どうして逃げ出さないのか不思議だった。きみまで捕らわれてしまうなんて。

海岸近くの林でまだあたたかい卵を拾ったね。恋や愛の果てでなく、保存のための繁栄。ぼくたちの朝食。お皿の上にのったまんまるの輝きを、命になったかもしれないものを舌の上に運ぶ。

気づかないふりをする礼儀。子どもじゃないぼくは弁えている。赤い糸で遊ぶあやとり。きみはズルをして魔法ばっか。

充血みたいな夕焼けに、覚えた限りを諳んじた。ぼくの話すでたらめな物語は種の保存になんら影響を及ぼさない。

目を閉じて、また開ける。星が瞬いて見えるのは、おまえがそう何度も瞬くからだよ。一度目をしっかりつむって。それから開けて。潤いをたたえたなら、しばらく本当の姿が見られるだろう。

きみは嘘をついていた。
ぼくが見抜いていることを見抜いていた。
透明なこころがこの先も見通してしまう。

きみは輪の中へ戻る。
ぼくはここに留まる。
さよならも言わないなんて。
手を離したらもう一度流れ星、きみを思ってこの体を燃やすよ。