No.735

繰り返してばっかりだね
ぼくたちはそっくりの顔で笑う
少しも抜け駆けすることのないように
だけど生まれ変わってしまったんだ

今夜みたいな黒、あと百年は会えない
さもなければ墨汁を垂らしてさ
空気に触れたことのない臓器に
尖った耳をじかにあてて行く末を尋ねるんだ

ぼくたち今からどこへ向かうの?
ここに来る前本当はどこにいたの?
回転を止めるにはどうしたらいいの?
きみはこの先もそうしていたいの?

否定を集めて透明の瓶に詰めた
肯定に変わるまで出してあげないよ
変わらないならそのままだよ
やがて垂らし込む毒に侵されるが良い

羽には手をつけないよう言ってある
羨望が注がれる標本箱の充実に一役買う
取り出して眺めることはあまり無いんだ
交渉の道具に使うことがあるだけ

満たされないのは分かっている
ぼくじゃないことは分かっている
きみの寝不足を疎ましく思う
殺せないぼくを疎ましく思う

引きちぎれば良いんだ
噛み砕けば楽になるんだ
何度もしてきたこととそう変わらないのに
不在の存在が地獄だとぼくはもう気づいている

『魔王の初恋』