【小説】凸凹

キリッとした強面さん。

いつか誰かがそう評した。第一印象。律儀なやつ。小さな頃から外見がいかつくて、堅気じゃない家の子どもなんだとか、5歳まで森で狼に育てられたとか、いろんなところで好き勝手に噂された。バラエティ豊かに。当の本人は余計な方向にまで気を回す性分で、だからって演じてまで自分を押し殺す必要なんかあった?

秘密の趣味は秘匿性を増し、小中高と成長。大学生になって初めて飲んだ酒の席で、苦手なアルコールをしこたま飲み、ついに本来の性癖を暴露。その場に居合わせた僕に目をつけられて今は従僕。

神さまはたまに間違えるね。容れ物と中身を。それは悲劇になったり喜劇になったりする。

カンにとって僕が前者で、僕にとってのカンが後者。

生まれも育ちも同じ地区、だけどほとんど接触のなかった僕たちが、突然親密になったこと、最初のうちこそ興味津々と見られたけれど、今じゃ誰もが慣れてしまった。

「チョコレートサンデー」。
眉尻が跳ねる。
「トッピングにアーモンドスライスとうさちゃんプレートで」。
楽しいな。
「…それは、厳しい」。
可愛いな。
「なんで?チョコレートサンデーを食べる僕を見られるのに?ほっぺたにソースをつけて?うさちゃんプレートをかじる僕を?」。
跳ねた眉尻がだんだん下がってくる。
嬉しいな。
愛しいな。
萌えで死んじゃえばいいのに。
「至近距離で?上目遣いで?一心不乱に?」。
そう、今まで我慢してきたものの中で、溺れて死んじゃえばいいんだよ、カンちゃん。
「うん、食べたいから。だめ?嫌い?」。
「ふむ、仕方ないな。買ってくる」。
「カンちゃん愛してる!」。
「黙って待っていろ」。
「行ってらっしゃい」。
手を振って見送る。
カウンターに向かう後姿。
カンが歩くと自然と道が開ける。
小銭を取り出すために少し丸まる背中。1円単位まで出してるんだろう。
道行く人ひとりひとりに説いて聞かせたい。幸せとは何かを。疎ましそうに、罵られながら。
符号を外して同じ数字になる。難しいことじゃなかった。手の内を明かし合えば。
凶暴な僕、虐げられたい君、あかるい青春、これがただしい3度目のデート。

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