たぶんかけがえのない早朝
トラックだけが追い越していく
歩道の真ん中に三毛猫が硬直していた
廃棄されたコンビニのおにぎりみたいに
ぼくは知らない
きみが生きたことをぼくは知らない
きみも知らない
ぼくが生きていくことをきみは知らない
しゃがんで写真を撮ってしまうこと
それじゃなんの弔いにもならないこと
大事にしようと思うんだ
抱えて行ったりできないんだ
靴紐がほどけた、と思ったら
みるみるいっぴきの蝶々になった
絵の具みたいに正しい水色へ溶けて
それはもう戻ってこない
大事にする
ねえ大事にするよ
ときどきひらいて
ときどきとじて
呼吸に似せて
孤独に寄せて
硬直を避けて
孤独を避けて
感じたことを忘れないでおくね
忘れてもまた約束をするね
言葉が尽きずさみしいぼくは
部屋に戻るやきみの隣に潜り込んだ
ねぼすけさん、ねぼすけさん
ぼくらの街は死でいっぱいだったよ
今日は靴紐もなくしてしまったよ
だけど美しかった
きみの魂ってやわらかだね