No.729

繊細な世界に存外丈夫なぼくがいて、ひずんでいくのを止められないでいる。読めない文字が書かれた旗が風のなかに揺れていて、どうかそれが救いを求める類でありませんように。祈りながら視線を逸らし、端的に言えば無視をした。撓みながら平均値へもどる途中、つまづいたふりをして群衆から離れた。泣き顔を見られたくないんだ、理由もなく笑ったように思わせていたいんだ。こちらの茨は鋭いな。だけど目隠しで両手がふさがる。真夜中の迎えがあんまり遅いので、ぼく一人の影なんかじゃ命一つも憩えない。