No.725

手のひら一枚にのせることのできる外の灯りに祈っていた。でたらめな文章、届かなかったときの言い訳も用意して。星はそんなにきらめきたいの。違う、ぼくが暗い場所から出られないだけ。夢を果たしていく仲間たちはもう生まれ変わって、次の愛を見つけている。ぼくの思いは昇っては落ちて、泥濘にとられて、また起き上がっては雨に降られる。いないのか、そこにはまだ誰もいないのか。懲りずに幻を追いかけているぼくが悪いのか。廃墟に横たわる満員電車。気まぐれに舞い降りたきみは、発光する朝顔の棺でぼくの目を見ている。頑張ったねえ。慰め。承認。許し。受容。ぼくの欲しかったもの。自分以外は無敵に見えてたんだ。白い花弁が紅い色に染まっていく。空から降ってくる、穴のあくほど見上げ続けた空からそれは降ってくるんだ。「おまえは守られていたんだよ。ずっと」。そうきみが教えてくれる。「信じることをやめなかったからね」。だけどきみに会えたということは、ぼくもやめてしまったということか。「そうとは限らないよ。これはぼくの気まぐれだから」。きみの言葉が粒子になってぼくの体を持ち上げた。ぼくのいた場所が血だまりになっていたこと、見下ろしたときに初めて知るんだ。