No.722

耳で聴く雨
これは刺されなかった者の血だ
憎まれなかった者の血だ
腕の中にある何かをしつこく手繰り寄せて

ダースで命が輸送されていく
どこよりも広い窓からそれを見てる
来訪者は驚いたように言うんだ
ここには窓なんかありませんよ

きみは一歩足を踏み入れて看破する
寂しいところに縛られているんだな
随分と多くの人に誤解されながら
手首は今も晒せないのかい?

ぼくは血なので
ぼくは骨なので
ぼくの魂は源であって種なので
根っこが枯れるわけにいかないだろう

きみだってぼくから生まれた
雪の降る朝にさ
銀色に光るあたらしい刃で
痛みと無縁の自傷の果てに

羨望と懇願で張り裂けそうになる
ここにいて誰よりも知っているので
臓腑がとても柔らかく脆いこと
刻んでもそれはぼくを忘れていくこと

真相に気づいて心臓を受けたぼく
雨粒と一緒に蹴落とされ親のないまま生まれた
きみはぼくを拾って祝福の辞を述べる
いい目をもらったね、夢に見た奈落へようこそ