No.718

雨が連れ去った憂いの中に
大切な何かを入れっぱなしにしていた
取り戻せず名前は思い出せない
本当にぼくのものだったかどうかも

真綿にくるまれた凶悪性
つまづいて露呈してしまう、介抱したのに
まっすぐに憤怒したかった
頭の片隅で「ぼくだったかも」など思わずに

他人事なんて一つもない
裏返せば同じ糸が絡まっている
優しいままのあなたでいてよ
願いがあなたを追い詰めることもあった

混じらずにかわしていく
指の間から漏れる光に照らして
いびつに震えながら手を伸ばす
遮られるまでを見届けて

救いのない一行をなぞり
あなたはたしかに微笑んだ
まだ救われていないぼくのいること
歩き出せないぼくのここにいることで