No.697

生まれた時に与えられた白い紙を
白のままにしておけなくてことばをのせた
安心して生きていると
また白い紙を与えられてことばをのせた

剥がされながら潤されていく
ことばは血ということだよ、
あこがれてやまない声がした
夢の中ならきみを思いどおりにできる

蛇口をひねり
透明なコップに水を注ぐ
傾けて喉に流し込む
ぼくたちをどうにかする星粒と

きみの仕草ひとつひとつが
ぼくには救済に見えてんだ
ほころびた世界を修復しているんだろう
ぼくをもう少し生かしてくれるんだろう

どこにもたどり着かないこと
それが答えなのかもしれない
スパイスたっぷりのカレーライス
気まぐれな手料理は懐かしい味がする

ぼくは塗りかえようとしていた
きみがぼくに無自覚にさしだす
すべてでもってこれまでのすべてを
つくりものの懐かしさなんて感じてまで

つながってみてわかったよ
体の奥ってからっぽじゃないんだ
だれにもいわなかったんだ
空洞を見たくなくて吐き出していたこと

堰を切っていまあふれ出すもの
ずっと閉じたままのぼくの喉から
きみの名前とカシオペア座が出てくる
新しい白紙が急速な愛で埋め尽くされる