No.696

たのしいことがない。いきがいがない。おぼれないよう泳がなきゃ。迷惑をかけないよう。不快にさせないよう。誰かに笑われるのでもいい。その子がすこしまともになれるのなら。渡せるものなら渡したいと思う。与えられるものなら与えたい。分解されることを祈っていたりもする。きみはちがうよと言う。おまえのそれは祈りじゃなくて。(じゃなくて?)。なんだろう、それに続く言葉、が、ぼくにはわからないよ。うまく穴埋めができない。足りすぎたり、減りすぎたり。ぼくにはとどかない。ぼくへとどけることができない、という不足をきみに与えたこと申し訳ないと思う。夢を見ていて、ゆめをみていて。ぼくに心臓があって、呼吸したら体温がともるような、うそでもほんとうでもどっちでもいいや、そんな夢を見ていてよ。奇跡や希望じゃ手垢まみれだ、まだ汚れていない、汚すことはきっとできない、きみの柔らかな絶望を見せて。