あなたが暴いたあなたの秘密に、ぼくがどう思うかは放っておいて。
朝にする散歩、スニーカーの底をふかふかさせる感触に気づいて視線を落とす。
道沿いの垣根から落ちたいくつものちいさな花だった。
つい昨日はなかったものだ。
ということはこれは、一夜のうちにいっせいに生まれた死なんだ。
まだ誰のものでもない光の中で、少しだけ目を細めて振り返ると、花の落下はどこまでもつづいているのだった。
一律の死。
眺めても悲しくないのは、悲しむものがいないからだな。
橙の猫も、神社の鳥居も、今が盛りと咲く花も、それぞれの日常をおくるだけ。重なり合っても文句は言わない、時には生まれてくるものも平気で見放す。
考えごとをしすぎるんだよ。あなたの言葉が聞こえた。幻だとわかっていた。おまえは考えすぎて、まわりがよく見えなくなるんだ。深く考えるのもいいけれど、たまには呼吸しにおいで。ひとがこわれるのは、かんたんなんだ。とくに、じぶんをつよいとしんじるひとにとっては。
再び前に向き直って、この先も花の落下がつづくのを見る。
迷って、踏みながら進むことに決めた。
ぼくは、花の死を、悲しまない。
今日あなたに会ったらどんな顔でなんて言おう。
白紙に戻して、もういちど想像してみるんだ。
ぼくがどう思うかは放っておいて、じゃない。
ぼくが思ったことを少しだけでも聞いてみて、だ。
いつもの散歩ルート、折り返し地点までまだ遠い。
会いたい気持ちを抑えきれなくなって、イヤフォンのボリュームを少しずつあげた。