No.683

きみになら分かるよね、そんな目でぼくを見るな。あなたになら伝わるよね、そんな手でぼくにさわるな。何も共感を得たくて秘密を明かしたわけじゃない。雨が降る夜、ビニール傘ににじんだネオンの青に照らされたぼくを、曇天に眠る三日月に恥じたくなかったんだ。(愛し愛されてみたいんでしょう?)。ある特定の答えを信じて疑わない、質疑応答に向き合いたくなかったんだ。ひどい、きみのために、私を傷つけるの?(ああ、)まさか、あなたの満足のために、俺のことを見捨てるの?(ああ、切実に、黙れよ)。久しぶりに全速力で走った後はにせものしか欲しくなくて、ぬいぐるみとだけ手をつないで日付変更線をまたいだ。薬もないのに遠出なんかしたせいで、ぼくは腹部を切り開いてしまう。痛い、きっとそう言いたかったのに。ほろほろ真綿が転がり出てはSOSを跳ね返して光るだけ。