No.680

きみは知らない
ぼくがときどき
薄い剃刀をくわえたまま
満月を見上げていたころを

あなたは知らない
わたしがときどき
剃刀と貝殻をすり替えて
ただ祈っていたことを

分かっていてもしてしまう
そんなことがあるんだ
たくさんたくさんあったんだ
ぼくたちも例外ではないから

遠くを見ないで
後ろを振り返らないで
わたし今のあなたを見ていた
もう少し生きてみようと思ったの