信じてなかった
空に格子は嵌められないんだ
あなたを信じて良かったのだ
ほんとうを言われて嬉しかった
つむじに雨が落ちてきた
鼻先に頬に落ちて唇を流れる
あなたは傘を持つだろうか
シャツを乾かしながら考えた
忘れられないひとに
すこしだけ似ていた
そのことが僕にとって
毒か薬かはわからない
どんな言葉もあなたではなく
あのひとから発せられるかもしれない
どんなにぬくく安心できても
それはあのひとの錯覚かもしれない
そんな自分を僕は許せるだろうか
そんな僕にあなたはもったいないと
手放したり傷つけたりしないだろうか
天気のいい日に考えることが多い
暗い想像で貶めるんだ
世界が輝いて見えるときは
コントラストで罰するんだ
笑っていいなんて言われていない
双子のぬいぐるみがやって来て
うなだれた僕の前でおじぎする
あのひとはあなたの前から去ることを
ご自分で望まれてそのようにしました
どうやらこのウサギ
ビー玉の目をしながらものを言えるらしい
僕は缶コーヒーをあおりながら
違和感もいっしょに喉奥に流し込んだ
それに、と右が言いかけ
貴殿は、と左が言葉をつなぐ
それに貴殿はお気づきでしょう
何もかもが明るみに出ていること
コーヒーをぶちまけた先にあったのは
ちいさな灰色の双子ではなく
僕へ会いに来たあなただった
清潔なシャツを汚してしまった
弁解できない僕を見てあなたは
困りながら笑うんだった
気づいていなかったんだね
空に格子は嵌められないんだ
毒でもなく薬でもない
他ならないあなただ
あのひとのことや僕のする暗い想像
すべて知って微笑むあなただ
笑えないことや許せないこと
拭い去っても拭い去れないもの
ひとつずつ話していこうと思う
一瞬の気休めは雨にまかせて